室町時代の名品

1392 - 1573

彫金を駆使した金色の飾金具で
武具が豪華にかざられた

 武将が身を包む甲冑は、戦場での自己の存在をアピールするための大切な手段であった。目にも鮮やかな色糸や、彫金を駆使した金色の飾金具で豪華にかざられた。戦場に赴く武士が総体として多くなるにつれ、威糸の色目や金具かざりが派手になっていった。
 胴の右脇を開いて装着し、数間の草摺(くさずり)を下げる形式の甲冑は胴丸と呼ばれ、元来は徒士が歩きやすいように工夫されたものであるが、室町時代には最も一般的な甲冑として上級武士までこれを着用した。小札(こざね)を綴り胴に仕立てる威毛(おどしげ)には韋や組糸が用いられたが、とくに後者は様々な染糸があり、胴丸の場合、段ごとに色を変える色々威(いろいろおどし)などが行われて、まことに華やかな彩りであった。
 一方、要所に付く金具も、本体保護という役割をはるかに超え、銅鍍金による金色の輝きを武具に添えた。

出典:特別展覧会 「金色のかざり」 金属工芸にみる日本美
解説:久保 智康 発行:京都国立博物館