平安時代の名品

794 - 1185

生活を飾る意識の高まりは、
神仏世界のかざり「荘厳」へ

平安時代後期、王朝の時代に、金工のかざりは劇的な展開を遂げる。富裕の人々の間で生活をきらびやかにかざる意識が高まりを見せようとしていた。しかしそのような風潮の、現代感覚でいう成金趣味に終わらないところが、この時代の要諦で、富裕の人々の意識は、より純化しつつ神仏世界のかざり、すなわち「荘厳」へと向けられていったのである。末世観を背景とする浄土教の流行、法華経や舎利への信仰などを具体的契機として造られた荘厳の品々は、究極的には人の眼にどう映るかが問題ではなく、神仏の眼にいかにかなうか、というきわめて真剣な姿勢に貫かれたもので、まさに善美を尽くしたものだった。

出典:特別展覧会 「金色のかざり」 金属工芸にみる日本美
解説:久保 智康 発行:京都国立博物館