和彫りの名品 解説

じんごじいっさいきょうきょうちつ

神護寺一切経経帙

  • 平安時代 12世紀
  • 京都国立博物館
    画像出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)を加工して作成

 経巻を束ねて保存するための経帙も、経荘厳(しょうごん)の好例である。京都・神護寺の一切経に誂えられた経帙は、一部に久安五年(1149)の墨書をもつものがあり、12世紀半ばの装飾性を見ることができる。竹籤を段々(だんだら)染めした色糸で編み、錦で縁取りした本体や紐端に、蝶形の金銅金具をつける。
 それまで工芸意匠の多くを、浄土に咲く花、宝相華が占めていたが、12世紀になると仏教工芸にまで現実の花や鳥、虫などのモチーフが描かれるようになった。とりわけ蝶をかたどったこの金具は、春日大社若宮御料古神宝中の平胡簶(ひらやなぐい)につく蝶形金具とともに当代を代表する具象的形態の飾金具である。羽の縁に蹴彫りで大きく描かれた斑(ふち)が古様を示す。以後、鎌倉時代にかけて蝶文はさまざまな工芸に取り入れられた。

出典
特別展覧会 「金色のかざり」 金属工芸にみる日本美
解説:久保 智康 発行:京都国立博物館

詳しい解説を閉じる

神護寺一切経経帙