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結婚かキャリアか?
働く女性が直面する“幸せ探し”
My Best Friend's Wedding「ベスト・フレンズ・ウェディング(1997)」
© 1997 TRISTAR PICTURES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
働く女性が愛と結婚を
真剣に考えるとき
結婚とキャリア。女性の人生を大きく左右するこの深~いテーマを、ちょっと斜めの角度から描いてみせた、90年代ウェディングムービーの名作が「ベスト・フレンズ・ウェディング」だ。
まず、最初に言っておきたいのは、働く女性にとって、「男性は必ずしも異性ではない」ということ。
むしろ同志くらいに思っていた方が、いろんなことがうまくいって、生きやすいものだ。
でも、そんな働く女性の“処世術”が愛する人を奪われる要因になってしまったら……?
PHOTO:AFLO
本作に登場するヒロインは、同志と思っていた“ベスト・フレンド”の予期せぬ結婚に戸惑い、右往左往してしまう共感度満点のキャラクター。
「もしあの時こうしていたら?」―― 結婚という人生の一大イベントを控える女性なら、そんな様々な“if(もしも)”が脳裏をよぎる1本といえるだろう。
ベスト・フレンドの結婚に
思わぬ感情が沸き上がる!
(C) 1997 TRISTAR PICTURES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
もうすぐ28歳を迎えるジュリアンは、歯に衣着せぬざっくばらんな性格で、料理評論家として活躍するキャリアウーマン。
ある日、大学時代の恋人で、いまはベスト・フレンドとして良い関係を築いているマイケルから、結婚を決意したとの電話を受ける。
お相手は、まだ大学生の社長令嬢。なんと結婚式を4日後に控えているという。
PHOTO:AFLO
ベスト・フレンドといっても、本音では、一番大切に思っていた人。「28歳になってお互い独身だったら、結婚しようね」とまで約束していた男性だ。
のろけながらの突然の結婚宣言にジェラシー全開となったジュリアンは、小娘からマイケルを取り戻すべく、2人のいるシカゴへ飛ぶ。
そしてシカゴの地で、ついにマイケルの婚約者キムと対面したジュリアン。
本当の愛に気付いたからか? はたまた若き恋敵の出現で(ベスト・フレンドの存在が)惜しくなったからなのか?
このモヤモヤした気持ちは、女性なら誰しも心当たりがあるはず。
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事実ジュリアンは、結婚式までの数日のうちにマイケルを取り戻そうと、あの手この手で“略奪計画”を仕掛けていくのだ。
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混乱した女心に沁みるのは
ゲイの友人による的確なアドバイス
さて、この映画には、もうひとり、重要なキャラクターがいる。
PHOTO:AFLO
ジュリアンの仕事仲間である、ゲイの友人ジョージだ。演じているのは、実生活でもゲイのルパート・エヴェレット。
いつだってジュリアンの話に親身に耳を傾ける彼は、働く女性にとって心底羨ましい理想の相談相手だ。
ジョージのアドバイスは、ジュリアンの混乱を落ち着かせる羅針盤。電話で助けを求められた彼は、ニューヨークからシカゴまでわざわざ飛んで来る。
「本心は、彼への愛より、彼女に勝つこと?」ジョージは尋ねる。
「彼は私のものなのよ」という嫉妬心が確かにあったことを認めるジュリアンだが、「やっぱり彼は素晴らしいの。今頃、愛に気づくなんて」と、切ない涙を見せる。
そんな彼女に諭す、ジョージの言葉が胸に突き刺さる!
「マイケルに告白を。9年間ずっと愛してたけど、愛が怖かったと。誰かのものになるってことは、いつだって不安だ」
「私を選んで。結婚して!」
友だちの関係を壊しても想いは伝えるべき?
その後、マイケルは、ジョージがジュリアンの恋人だと勘違いし、微妙に嫉妬したりと、やっぱりベスト・フレンドの間には、特別な感情がある様子。
この勘違いが解けた後も、ジュリアンは奥の手で、結婚を阻もうとする。
(C) 1997 TRISTAR PICTURES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
そしてついに結婚式当日! 作戦が成功して式の中止を考えるマイケルに、愛を打ち明けるジュリアン。
「こんな時に言い出すのはバカげてるけど、私を選んで、結婚して、私にあなたを幸せにさせて」
そして、ジュリアンからのやや強引なキス。そんなふたりの姿を見てしまったキムは、ショックで式場から走り去る。
果たして、マイケルはどうする? ジュリアンは? キムは?
結婚とは、自分にとっての女の部分と向き合うこと
マイケルの花嫁決定戦は、最後の最後までもつれ込むが、映画のラストを締めくくるのは、笑顔に包まれたウェディング・シーン!
挙式は、教会で行われる極めて王道なスタイルだが、夜のプールサイドで催される二次会のパーティは実にいい雰囲気。
生バンドの演奏といい、新郎新婦のファーストダンスといい、大人のしっとりとしたパーティスタイルはぜひ参考にしてほしい。
そして何より観る者の心を打つのが、「すべて私の願い通りになりました」と語ったジュリアンの心からの笑顔。
PHOTO:AFLO
ジュリアンが花嫁になっているか否かはさておき、その曇りのない笑顔からは、最良の選択をした誇らしさが感じられる。
愛をこの手で掴み取り、結婚しようとすることは、将来のビジョンだけでなく、自分の女としての部分に向き合い、表現しなければならないシビアな現実だ、と本作を観てつくづく思う。
ジタバタするのも人生の醍醐味。
結婚式までの3日間で、“結婚”の価値が激変したジュリアンやキムのように、たった数日であっても、“その後の人生”を変えることがある。
「ベスト・フレンズ・ウェディング」は、そんな大事なことに気づかせてくれる永遠のウェディング・ムービーだ。