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正反対の姉妹に見る
女性の“幸せのカタチ”
In Her Shoes「イン・ハー・シューズ (2005)」
© 2015 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
幸せたっぷりの結婚式
しかし実は、直前まで絶縁状態!?
妹からプレゼントされたウェディングドレスを身にまとい、輝くような笑顔でバージンロードを歩く姉。新たな門出を迎えた姉を、感激の面持ちで見つめる妹。
仲の良い姉妹の姿が胸を打つ、結婚式は幸せそのもの…。しかしこの姉妹、実はつい最近まで絶縁状態だった!
この結婚式のシーンは、人の温もりと人生の機微に満ちた映画「イン・ハー・シューズ」のクライマックスに訪れるもの。
姉のローズと妹のマギー、正反対の姉妹はなぜぶつかり合ったのか?そしてなぜ再びお互いの大切さに気づいたのか?
2人の辿った“自分探し”の道のりをご紹介してみよう。
自由奔放な妹と堅物の姉。
正反対の姉妹を“靴”が物語る
主人公となるのは、ゴージャス&セクシーなルックスのマギーと、弁護士として成功を収める堅物の姉ローズ。見た目も性格も正反対の2人は、まるでコインの裏表のよう。
PHOTO:AFLO
妹マギーは、飲んだくれたり、男性の誘いにも気軽に応じたり、姉にたかったり、職探しもままならなかったりと、とにかく迷惑をかけまくりのトラブルメーカー。
一方、姉ローズは、弁護士としてキャリアを築いているものの、自分の見た目に自信が持てず、ロマンス小説の恋愛に憧れているような女性。
奔放な妹を持ったこともあり、常にしっかり者でいなければいけないのが、悲しいところだ。
そんな2人の心情を雄弁に映し出すのが、映画のタイトルともなっている“靴”だ。
例えば、ローズのお気に入りのジミー・チューのハイヒールを、マギーが雪でダメにしてしまうという印象的なシーン。
このシーンは、いかにマギーがローズにとっての厄介者であるかを物語っている。
(C)2015 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.All Rights Reserved.
生き方もしかりで、片っ端から靴の試し履きをするくせに、お気に入りが見つけられないマギー。一度も履いていない高価な靴を、ぎっしりとクローゼットにしまいこんでいるローズ。
ぴったりの1足が見つからず、迷いの中にある彼女たちの姿を表す、“靴”に対する考え方も実に面白い。
姉妹戦争勃発!
“自分探し”の旅が始まる
そんな彼女たちにある日、決定的な衝突が起きる。原因は男関係だが、これには今まで妹の態度に我慢し続けてきた姉も「私の人生から消えて!」とブチキレ!
ローズに家を追い出されたマギーは、幼い頃に別れたフロリダの祖母のもとへ。
PHOTO:AFLO
衝突のショックを断ち切るため、ローズも朝から深夜まで働きづめだった仕事をやめ、恐る恐る、新たな一歩を歩み出すのだ。
この旅路から、観客は心の奥に隠していた彼女たちの本当の姿を目にすることになる。
やりたい放題に見えたマギーは、実は難読症を患っており、自分に自信が持てなかった。
PHOTO:AFLO
彼女が祖母の住む老人ホームで、次第に誰かに必要とされる喜びに気づき、新しい自分に生まれ変わっていく成長ぶりは、まぶしいほどの光を放つ。
容姿のせいで自信が持てなかったローズは、見栄をはらず、ありのままの自分を愛してくれる人を見つける。
PHOTO:AFLO
彼女が働きづめだったのは「私を認めてくれる仕事を失うのが怖かったから」。初めて不安な気持ちを打ち明けられる男性と出会い、仕事、仕事で頑なになっていた彼女の心がほどけていく様は、現代の働く女性たちの共感を呼ぶだろう。
ローズとマギー、2人の変化に思わず拍手を送りたくなること請け合いだ。
キャリアウーマンが結婚を選択
新たなスタートを切れた理由は?
マギーを演じるのは、キャメロン・ディアス。トレードマークのキュートなビッグスマイルはもちろん、繊細な心の動きを見事に演じきり、本作は彼女の代表作となった。
(C)2015 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.All Rights Reserved.
ローズに扮するのは、演技派女優のトニ・コレット。この映画はつい、振り幅の大きな妹マギーの成長に目がいきがちだが、キャリアウーマンから結婚へと、人生の大きな選択をした姉ローズにこそ、現代女性に注目してほしい。
ローズが結婚という新たな人生のスタートを切れたのは、“うれしいと思うこと”、“新しい出会い”に素直になってみたから。
PHOTO:AFLO
そして、家族ともう一度しっかりと向き合ってみたからこそ、結婚の素晴らしさに気づく。
そう、衝突ばかりだった妹も、常に生き方を重ね合い、共に人生を歩んできた親友だったのだ。
PHOTO:AFLO
ローズが見つけた自分にぴったりの1足は、祖母から借りた年代ものの、ウェディングシューズ。
妹から贈られた、胸元に刺繍があしらわれた真っ白なドレスも美しい。結婚式は、家族の絆を象徴するようなアイテムに彩られた。
そして隣には、これからを共にする伴侶が…。
人生という木が枝葉を増やすように、ローズにとって、生き方と心を重ね合わせる存在が、妹だけでなく、もう1人増えたとも言えるだろう。
ローズの結婚という新たな門出は、より自分らしく、より幸せになるための出発点のよう。家族、結婚の意味や、本当の“幸せのカタチ”が見えてきそうな愛に満ちた1作だ。