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結婚までの紆余曲折…
その道のりが愛を確信するプロセスに
Pride & Prejudice「プライドと偏見(2005)」
Film (C) 2005 Universal Studios and Scion Films (P&P) Production Partnership. All Rights Reserved.
18世紀イギリスの
“婚活”から見えるものって?
ジェーン・オースティンは、イギリスを代表する女流作家のひとり。18世紀後半に生まれた彼女は、田園の中流社会を舞台に、“女性と結婚”についての小説を書き続けた。
そんな文豪の最高傑作を映画化したのが、「プライドと偏見」。20歳のキーラ・ナイトレイが眩いほどの輝きを見せる一本だ。
女性にとって、この時代の結婚は、将来の社会的地位と経済状況を保障するためのものとしてあった。
PHOTO:AFLO
そうした背景で、ひとりの男性と出会い、紆余曲折を経て、愛を確信していく若い女性の姿をロマンティックに描く。
ルックス、性格、経済力…。現実的に目を光らせ、結婚相手を探しているイギリスのレディたちの切実さは、現代の“婚活”を彷彿とさせる。
だからこそ、結婚とは何ぞや?という問いが、時代も国も違う物語から、こんなにもまっすぐ伝わるのかもしれない。
出会った瞬間に
お互い意識し始めるが…
18世紀の終わり頃。イギリスの中流社会。田園町に暮らすベネット家の5人の娘たちは、年頃となり、結婚の問題が迫っていた。
PHOTO:AFLO
女性には相続権がないため、父親が死んだら、家も土地も遠縁の男性が引き継ぐことになる。将来を考え、母親は娘たちを資産家と結婚させようと躍起だ。
そんなある日、近隣の豪邸に大金持ちの独身男性ビングリーが越してくる。心浮き立つベネット家の娘たち。舞踏会の夜、姉妹の中で最も美しい長女ジェーンに、ビングリーは興味を持つ。
PHOTO:AFLO
一方、読書好きの知的な次女エリザベスは、ビングリーの親友ダーシーの、女性を見下し、ダンスもしない態度に反感を覚えていた。
Film (C) 2005 Universal Studios and Scion Films (P&P) Production Partnership. All Rights Reserved.
さて、このエリザベスこそ、本作のヒロイン。乙女チックだが、気が強い娘。でも、実は、最初からダーシーをひどく意識している。
Film (C) 2005 Universal Studios and Scion Films (P&P) Production Partnership. All Rights Reserved.
そして、ダーシー。ハンサムだが、どこか陰があり、皮肉屋。初対面から気になっているエリザベスに、そっけなく接してしまう。元祖ツンデレと呼びたい!
舞踏会を機に、ビングリーと姉のジェーンが接近する中、エリザベスとダーシーも顔を合わせるようになり、その度に、エリザベスは内心ドキドキ。
だけど、彼の“プライド”の高さは彼女を苛立たせもするのだった。
大好きなのに、大嫌い
最悪のプロポーズ
まもなく、町にやって来た連隊の青年将校ウィッカムが、エリザベスに思いを寄せ始める。そして、子どもの頃から知っているダーシーからひどい仕打ちを受けたと話す。
PHOTO:AFLO
同じ頃、ビングリーが館を引き上げ、ロンドンに帰ってしまう。ジェーンは失恋に心を痛めるが、彼が去ったのは、ダーシーの入れ知恵があったからという噂が流れる。
ショックと怒りに震えるエリザベス。が、そんな彼女の前にダーシーが現れて、思いがけない胸の内を吐露する。
「家族の期待やあなたの生まれ、自分の階級などを考えて思いとどまろうとしましたが、助けてください。愛しています。身を焦がすほど。どうか僕の妻になってください」
Film (C) 2005 Universal Studios and Scion Films (P&P) Production Partnership. All Rights Reserved.
本当は、彼にどうしようもなく惹かれているのだが、エリザベスの中の理性が勝つ。
「初めて会った時から、高慢で、人の気持ちを考えないあなたとなんか、どんなことがあろうと絶対に結婚することはないとわかっていましたわ!」
間違いなく互いに好き合って、求め合っているのに、最悪のプロポーズ。雨に打たれて見つめ合うふたりが切ない。
それから、ベネット家では末娘の駆け落ちの果ての結婚という事件があり、また、ビングリーが戻り、ジェーンと結ばれるなど、大きな出来事が続く。
Film (C) 2005 Universal Studios and Scion Films (P&P) Production Partnership. All Rights Reserved.
そうした中で、エリザベスは、ダーシーの信頼できる本質に気づいていく。噂は誤解を生んでいた。彼女の“偏見”は、ダーシーの真の姿を曇らせていたのだ。
ダーシーの再度のプロポーズ。もうエリザベスが彼との結婚を迷う必要はない。
幸せな結婚に必要なのは
経済、家柄、それとも…
この映画には、経済状況や家柄の話がたびたび出てくる。なぜならそれこそが、当時の結婚条件の絶対的な基準だったから。
でも、エリザベスは、ピュアすぎるくらい愛に従いたい人。情熱で異性を求める人。
と同時に、理性の人でもある。
彼女は、すでにあんなに好きになっていたにも関わらず、ダーシーの最初のプロポーズを強く断ったのだ。
どんなにリッチでも、セクシーに感じても、人間的に信用できない男性を、彼女は結婚相手に気易く選ばなかった。
エリザベスは、その後の一連の出来事から、相手の良い資質を感じとり、見極めて、結婚に踏み込む決意をする。
Film (C) 2005 Universal Studios and Scion Films (P&P) Production Partnership. All Rights Reserved.
情熱と理性。難しいけれど、このバランスを持つことが、女性が幸せな結婚をつかむ鍵ではないだろうか。
エリザベスが、ダーシーとの結婚のお許しを請いに、父親に報告するクライマックスが最高に感動的だ。
彼女は言う。
「彼のことが大好きなの。愛してるの。私たち、よく似ているの。どっちも頑固だし」
よく似たふたり。
気心が知れたふたり。そしてきっと、それぞれの美点が互いの欠けたものを埋め、助け合っていくのだろう。
光溢れる田園風景の中で繰り広げられる、結婚までの物語。いつまでも胸が高鳴るほど、幸せな気持ちになる名作だ。