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結婚準備の参考に!ベストウェディング映画30

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“その結婚ちょっと待った!”
衝撃のラストで結婚観が試される?

The Graduate「卒業(1967)」

PHOTO:AFLO

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愛する女性を奪い返せ!
数多のパロディを生んだ珠玉の名作

愛する2人が結ばれる黄金のパターンのひとつが、聞こえは悪いが“略奪婚”。

「恋は障害があるほど燃える」とよく言われるように、“略奪”という大きな困難を乗り越えた末の結婚となれば、また格別なはず。

ちなみにここで言う“略奪婚”とは、なんらかの事情によって引き離されてしまった恋人同士。その女性の方が別の男性と結婚してしまう。

PHOTO:AFLO

しかし、式場に駆けつけた元カレが「異議あり!」と唱え、愛し合う2人が駆け落ちする。

映画やドラマでよく描かれているアレのことです。そんな劇的な結婚とくれば、女性も男性も盛り上がること間違いなし…!

でも、現実に起こったらちょっとタイヘンなこのパターン。それを描いた一番有名な映画といえば、ダスティン・ホフマン主演の「卒業」だ。

だけどこの映画、ただのロマンチックなラブストーリーというだけではない。

年上の女性との情事というスキャンダラスな体験を通じて描いた青春映画であり、ひとりの青年が自分にとっての大切なものを見出す成長物語でもあるのだ。

本気の恋に落ちた時
待ち受ける試練をどう乗り越える!?

主人公のベンジャミンは大学を卒業したばかりの青年。成績は優秀で両親も鼻が高いが、社会のレールに乗せられてしまうことをなかなか受け入れられないでいた。


(C) 1967 StudioCanal Image. All Rights Reserved.

そこに現れたのが両親の友人で、父親の事業の共同経営者の妻であるロビンソン夫人。

妖艶な彼女は、なんと自分の娘の幼なじみでもあるベンジャミンに色仕掛けで迫り、愛人にしてしまうのだ。

将来の目標を見失っている“迷える子羊”ベンジャミンも、ズルズルとロビンソン夫人との関係にハマってしまうのだが、ある日、本気の恋に落ちる。

あろうことかその相手は、ロビンソン夫人の娘のエレインだった!


PHOTO:AFLO

2人の仲はロビンソン夫人に妨害され、愛するエレインは別の男との結婚が決まってしまう。そしてあの有名な、結婚式に乗り込むラストシーンがやってくるというわけだ。

主人公の心情を代弁した
サイモン&ガーファンクルの名曲たち

そして映画を彩るのが、マイク・ニコルズ監督たっての希望で起用されたサイモン&ガーファンクルの楽曲だ。

「ベンジャミン、私を許して。これがあなたには最良よ。愛している。でも(2人が結ばれるのは)不可能なの」


PHOTO:AFLO

他の男性との結婚を決めたエレインからこんな伝言を受け取り、彼女を探しに町へと飛び出すベンジャミン。

そのシーンで流れるアップテンポな主題歌「ミセス・ロビンソン」が、「今のオレは誰にも止められないぜ!」と言わんばかりの彼の心境を代弁している。

そして、2人が結婚式場からバスで逃げるラストシーンでは、「サウンド・オブ・サイレンス」という美しいけれど、どこか気だるく儚げな曲が流れ出すのであった。

“結婚”とは自分たちで選択するもの!
若者たちを勇気づけたクライマックス

実は大勢の人に誤解されているのが、本作のラスト。ベンジャミンがエレインを取り戻す例のクライマックスである。

PHOTO:AFLO

“略奪婚”の黄金のパターンから考えると、神父や牧師が「異議ある者は名乗り出よ」と言ったところで、「異議あり!」と名乗り出るのが定石。

ところが今作では、ベンジャミンが駆けつけた時にはすでに、結婚の誓いもキスも終わってしまっているのだ。

これは原作からニコルズ監督が改変した部分で、最初はプロデューサーも戸惑ったという。

しかしこの改変のおかげで、ロビンソン夫人の「もう遅いわ!」に対するエレインの名セリフ、「私には遅くないわ!」が生まれたのだ。

結婚とは自分たちが選択するもの。

そんな強い意志を得たのはベンジャミンだけじゃない。エレインもまた芯のある女性へと成長をとげたのである。

PHOTO:AFLO

ハッピーエンドのその先は?
「卒業」が描いた本当のラストシーン

しかし「卒業」では、めでたしめでたし、といった単なるハッピーエンドが描かれているわけではない。

映画をちゃんと見直すと、ニコルズ監督は“黄金のパターン”のさらにその先まで描いているのが分かる。

教会から脱出した2人はバスに飛び乗り、どこへともなく旅立っていく。笑顔で笑い合う2人だが、やがて放心したような、不安とも取れる曖昧な表情を浮かべて去っていく。

結婚後も2人の人生は続いていくし、若い衝動もいつかは色褪せる。そんな現実を暗示させるようなラストは物議を醸し、長年論争の的になってきた。

公開から30年後の1997年に、ニコルズ監督はこのシーンの舞台裏を明かしている。

監督はダスティン・ホフマンとキャサリン・ロスが演技している最中に、「もっと笑え!」と怒鳴りつけていたというのだ。

(C) 1967 StudioCanal Image. All Rights Reserved.

そして、やっと撮影が終わったと思った2人の放心と困惑の表情が、そのままあのラストシーンに使われたのだとか。

「2人の顔が気に入ったから」と、あのカットを使用した理由を語っていたニコルズ監督。その結果、結婚というものの複雑さを連想させ、多様な解釈を生むことになった。

このラストに何を感じるのかは、どうか映画を観たあなた自身に決めていただきたい。今のあなたの結婚観が、そこに反映されているはずだ。

(村山章)

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