3
二度目は切りたくない
“運命の糸”を使った感動のプロポーズ
Stepmom「グッドナイト・ムーン(1998) 」
(C)1998 GLOBAL ENTERTINMENT PRODUCTIONS GMBH & CO. FILM KG AND SPE GERMAN FINANCE CO. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
一度、離婚している恋人
家族になろうと奮闘するヒロイン
愛する人と結婚して家庭を作るとき、誰しもが「ずっと幸せでいられますように…」と願います。
そして結婚式では、神父の前で永遠にパートナーを愛することを誓うことでしょう。
しかし中には、夫婦関係が壊れ、“離婚”という悲しい結末を迎えるケースもありますよね。
そして、自分が結婚したいと思った相手が、過去に離婚を経験していたなんてことも、今の時代珍しいことではありません。
(C)1998 GLOBAL ENTERTINMENT PRODUCTIONS GMBH
今回ご紹介する映画は、ジュリア・ロバーツ主演の「グッドナイト・ムーン」。
前妻や連れ子たちとの関係を中心に描いている作品で、ヒロインが彼らとの関係を築くために奮闘します。
嫌な思いをしつつも努力し、徐々に家族になっていくヒロインの姿と、そんな彼女へのロマンチックなプロポーズはとても感動的です!
彼の娘や前妻から嫌われて…
結婚までの長い道のり
(C)1998 GLOBAL ENTERTINMENT PRODUCTIONS GMBH
カメラマンとして活躍するイザベル(ジュリア・ロバーツ)は弁護士のルーク(エド・ハリス)と恋に落ち、一緒に暮らしていました。
ルークには離婚歴があり、彼の娘と息子も同居していますが、娘のアンナはイザベルのことをとても嫌っていて、前妻ジャッキー(スーザン・サランドン)の態度も、とても冷たいものでした。
その様子を見ていたルークは、イザベルや子どもたちのことを案じて「ベビーシッターを雇おう」と相談。
しかしイザベルは「子どもたちを預けるほど私を信用していないの?そんなことしたら距離ができてもっと憎まれてしまう」と反対します。
「前妻との子なんて私には関係ない」と距離を置くことだってできるのに、イザベルはルークを本当に愛しているからこそ、彼が愛する子どもたちと誠実に向き合おうとしているのです。
(C)1998 GLOBAL ENTERTINMENT PRODUCTIONS GMBH
しかしその一方で、アンナは思春期ゆえに父親の恋人など認められず、ジャッキーは自分の子どもをイザベルに預けることが面白くない…。
それぞれの気持ちを理解できるからこそ、誰も憎むことはできませんし、「イザベルがんばって!」と応援したくなります。
(C)1998 GLOBAL ENTERTINMENT PRODUCTIONS GMBH
そんな中、イザベルにある試練が訪れます。アンナの弟・ベンが、目を離したすきにいなくなってしまったのです。
ベンはすぐ見つかったものの、この件はジャッキーとの間に亀裂が入る原因となりました。
がんばっているのに報われない、むしろ状況が悪くなっているのを見て、「こんな調子じゃ、彼女が幸せになるのはまだ先なのかな?」と視聴者としてはハラハラ…。
(C)1998 GLOBAL ENTERTINMENT PRODUCTIONS GMBH
しかしそう思ったのも束の間。後日ルークはジャッキーと食事をした際にこう言うのです。「イザベルにプロポーズしようと思っているんだ」
「なぜ今度の結婚は成功すると思うの?私たちは破綻したのに」と尋ねるジャッキー。
しかしルークは黙ったまま。この答えは、プロポーズの言葉の中に隠されています。
彼がくれたのは
切れることのない“運命の糸”
PHOTO:AFLO
ルークはベッドで寝ているイザベルのもとへ行き、まずは彼女に優しくキス。
「プレゼントがあるんだ」と、まどろんでいるイザベルを、愛情たっぷりに起こします。
ようやく起きた彼女に、ルークが差し出したもの…それはリングケースでした。
イザベルはそれを笑顔で受け取り、そっと開けます。しかしそこに入っていたのは、リングではなく“糸”。
(C)1998 GLOBAL ENTERTINMENT PRODUCTIONS GMBH
「ジャッキーとは学生時代からつきあっていて、結婚するのが自然の流れだと思っていた。でも、本当に男女が愛し合うのなら、結婚は自分の意志で決めなくちゃならない。難しい問題が起こっても、決意を忘れずに生きるんだ」
ルークはそう言って、糸の端をイザベルの薬指に巻きつけました。
彼はその糸を少しずつ伸ばしていき、「僕は一度この糸を切ってしまった。今度は切らない」とイザベルに誓います。
そして手に隠し持っていたリングを糸に通し、ゆっくりイザベルの薬指へと届け、「結婚してくれ」とプロポーズするのでした…。
(C)1998 GLOBAL ENTERTINMENT PRODUCTIONS GMBH
見出しではわかりやすく“運命の糸”と書きましたが、どちらかというと、これは“絆の糸”だと思います。
自然の成り行きや運命に頼るのはもう卒業して、これからは自分の意志で人を愛し、結婚する。この決意を忘れなければ、辛いことがあっても絆の糸が切れることはない…。
これが、「どうして次の結婚が成功すると思うの?」というジャッキーの質問への答えなのでしょう。
(ちょっとジャッキーには残酷な言葉な気もしますね…だから言わなかったのでしょうけど…)
一度離婚を経験しているルークだからこそ言える、地に足の着いた大人なプロポーズ。そしてロマンチックな演出と、まっすぐな「結婚してくれ」という言葉。
もちろんイザベルの返事は「イエス」!がんばり屋のイザベルが幸せを手にしたこの瞬間は、自分の努力が報われたような気持ちになり、感動的でした。
結婚することと
家族になることは違う
C)1998 GLOBAL ENTERTINMENT PRODUCTIONS GMBH
ここからは主にイザベルとジャッキーの関係にフォーカスします。ジャッキーにはある運命が訪れるのですが、この先はぜひ映画をごらんください。
この映画は、「結婚したからといって無条件に家族になれるわけではないんだな」と痛感させられる作品でした。
逆を言えば、離婚したからといって家族でなくなるわけではないと感じる瞬間も多々あります。ジャッキーもまた切ない立場なのです。
(C)1998 GLOBAL ENTERTINMENT PRODUCTIONS GMBH
もしイザベルと同じ状況になったら、彼女のようにふるまえる人は多くないと思います。
しかし、本当に彼を愛しているのなら、前妻や彼の子どもたちにも誠実に向き合っていけるのかもしれません。
きっとそれが「家族になる」ということなのでしょう。