和彫りの名品 解説

くろかわかたつまどりおどしのどうまる

黒韋肩妻取威胴丸

  • 重要文化財
  • 室町時代 15世紀
  • 東京国立博物館
    画像出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)を加工して作成

 右脇引合わせの胴に筋兜と袖を配した胴丸。黒韋を地の威として、兜(かぶと)のしころ※1、胴、袖の上二段を白糸で肩取威(かたどりおどし※2)、袖や草摺の一端を紅糸で三角形に威す妻取威(つまどりおどし)とした珍しい配色である。しころの後中央、胴の前後は二等辺三角形に紅糸を用いた沢瀉威(おもだかおどし)としている。  
 頭を覆う主要部である兜の鉢は、前後を高くした阿古陀形(あこだなり)と称される四十八間(けん)の筋鉢(すじばち)で、筋に銅鍍金(どうときん)の覆輪(ふくりん)をかける。覆輪とは刀の鐔(つば)や馬の鞍(くら)など種々の器物の周縁を金属の類で細長く覆って損壊に備え、あわせて装飾を兼ねたものをいう。鉢正面には銅鍍金枝菊文透彫(どうときんえだぎくもんすかしぼり)の鍬形台(くわがただい)を打ち、中央に三鈷柄形(さんこづかがた)の祓立(はらいたて)を設けている。しころは四段下り、両端の三段を吹返(ふきかえ)す。胴は、右脇引合せで、草摺(くさずり)※3は七間(けん)五段下りとし、胸に杏葉(ぎょうよう)一双を下げる。  一部に破損があるものの、兜・胴・袖の三ツ物が揃い、肩妻取威に沢瀉威も交えた類例の少ない威の胴丸として貴重である。
※1しころ: 兜(かぶと)の鉢の左右・後方につけて垂らし、首から襟の防御とするもの。多くは札(さね)または鉄板を三段ないし五段下りとしておどしつける。
※2 おどし:鎧(よろい)の札(さね)を革や糸で結び合わせること。また、その革や糸。
※3鎧(よろい)の胴の付属具。大腿部を守るために、革または鉄を連結して、ふつう五段下りにおどし下げる。下散(げさん)。垂れ。

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黒韋肩妻取威胴丸